グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
なんとういう事だ…成功率40%以下の手術だと言うのに、私ではなくセシレーヌに手術御お願いするとは…。
確かにセシレーヌは今まで沢山の患者を助けて来た、難しいと言われた手術でもすんなりと成功してきたのは事実だが、心臓外科医に来てからの執刀は初めてだ。
「セシレーヌ。大丈夫なのか? 引き受けても」
心配そうに尋ねたクラウドルに、セシレーヌはフイッと視線を反らした。
「仕方ないじゃん、本人が言っている事だから」
「だが…」
「じゃあ何? このまま手術を受けずに、何とかなるって言うわけ? 私じゃないと、手術受けないって言ってんだろ? 」
「そうだが…」
スッと立ち上がったセシレーヌ。
「もういい? 私が執刀すれば手術は受ける、執刀しなければ手術は受けない。2つに一つ。…私はどっちでも構わないよ、院長が反対するなら好きにしたら? 」
それだけ言うとセシレーヌはそのまま応接室を出て行った。
やれやれと、クラウドルは深くため息をついた。
「とりあえず、国王様のお申し出もございますので。今回の手術は、セシレーヌに執刀を願いする方向へ進めて参ります」
「はい、そうして下さい」
「それでは、手術の前日から入院になりますのでよろしくお願いします」
「分かりました。楽しみにしていますね」
すっかり上機嫌のジュニアールに、クラウドルは内心理解できないままだったが、手術の執刀はセシレーヌに任せる事で話はまとまった。
先に出て来たセシレーヌは、ムスっとしたまま外に出てて来てお城の中庭にある花壇を見ていた。
花壇には年中バラの花が咲いている。
今は黄色いバラが沢山咲いていて、見ていると心がとても和んでくる。
「…なんで私なの? …」
そう呟いたセシレーヌは、ギュッと唇を噛みしめて、そっと自分の胸に手を当てた。
(大丈夫よ。貴女はできる。完璧よ、心配しないで)
胸の内側から聞こえてくる声に、セシレーヌは辛そうに目を細めた。
「何言ってんだ…アンタの命を奪って、私は生きているのに…」
パキッ!
木の枝が折れて落ちて来た。
その音にハッとなったセシレーヌ。
「あれ? お姉ちゃん。もしかして、黒魔法が使えるの? 」
幼げな少女の声が聞こえて、セシレーヌが振り向くと、そこにはまだ12歳くらいの可愛い女の子がいた。
綺麗な金色の髪を頭のてっぺんから結ってみつあみにして、綺麗な透き通る白い肌にくるっとした多いな目に綺麗なブルーの瞳。
子供っぽい丸顔に筋の通った高い鼻は、ジュニアールと似ている感じが受ける。
ピンク色のワンピースに、白いソックスと黒い靴の姿はとても上品である。
誰? あんた…。
セシレーヌがそう思うと、女の子はニコっと笑った。
「初めまして、私ミディスです」
ミディスと聞いて、皇女である事が判ったセシレーヌはフイッと視線を反らした。