グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
「あの、もしかして。セシリア先生の、お身内の方でしょうか? 」
「なにもお話していないと言うのに、よくお分かりになられましたね国王様」
「はい、貴方の後ろにセシリア先生とよく似た男性の方がおられますので。そう思っただけです」
「なるほど、そうでしたか」
セドリシアはジュニアールに歩み寄り、名刺を渡した。
「国王様にお渡しするのは恐縮でございますが、私は北グリーンピアトで弁護士をやっておりますセドリシアと申します」
差し出された名刺を受け取ったジュニアールは、名前を見ると納得したように頷いた。
「セシリアの父親と私は兄弟になります。なので、セシリアは姪っ子になります」
「そうでしたか。なんだか安心します。セシリア先生にも、お身内の方がいらしたのですね。早くにご両親を亡くされ、ずっとお一人で頑張って来られていたようでしたので。貴方のように、ご立派なお方がお身内にいらっしゃる事にとても安心しました」
「国王様は、セシリアの事をとても気にかけて下さっているのですね? 」
「それは勿論です。先生には、命を救って頂きましたから」
それだけではない…セドリシアはそう感じ取った。
「あの、もしかしてセシリア先生は今は貴方と一緒にいらっしゃるのですか? 」
「ご想像にお任せします」
「そうですか。では、先生に伝えて頂いても宜しいでしょうか? 」
「どんな事でしょうか? 」
穏やかに微笑んでいた表情を緩め、真剣な眼差しを向けたジュニアール。
「…私の気持ちは一度たりとも、ブレたことはありませんと、お伝え下さい」
ブレたことはないと聞いて、セドリシアはやはりそうなのかと納得した。
「畏まりました、お預かりしておきます」
そっと一礼して、セドリシアは去って行った。
「…彼は、セシレーヌ先生を必死で護ろうとしている…。どれだけ傷ついて来たか、よくご存じのようですね…」
去り行くセドリシアの背中を見つめて、ジュニアールはそっと呟いた。