グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
許し

 数日後。

 ミディスの怪我も回復に向かい、後はお城で療養して大丈夫だと診断が下され退院許可が下りた。
 
 最終検査の為、ミディスは車いすで看護師に連れられて廊下を取っていた。

 すると。
 院長室へ入って行くセシレーヌの姿を見かけた。

「看護師さん、ここで大丈夫だから先に戻って下さい」
「え? ダメですよ。お一人で戻られては危険です」
「じゃあ、5分だけ時間を頂けますか? 」
「5分ですか? 」
「どうしても、院長先生に話したい事があるです。だから」
「分かりました。では、ここでおお待ちしておりますので」
「有難う」

 ミディスは自分で車いすを自走して、そのまま院長室へ向かった。


 院長室のドアの前に来たミディスは、そのままノックしようとしたが、中から話し声が聞こえて来て動きを止めた。

 院長室の中ではクラウドルとセシレーヌが、何か深刻そうな顔をして話していた。

「…どうするんだ? 」
 少し厳しい目をしてセシレーヌを見て言いるクラウドル…。
「どちらを選んでも、不幸だと思うけど…。来てくれた命に、罪はないと思うから…。私が一人で、全部背負ってゆきます」
 苦渋の決断をしたように、辛そうな目をしてセシレーヌが答えた。
「分かったよ。それなら、私も協力する」
「いえ、院長にはご迷惑はかけられませんから」
「迷惑だなんて思っていない。私からの、せめてもの罪償いと思って欲しい」
「そんな…」
「もういいから、元気な子供を産む事だけを考えてほしい。南グリーンピアトには、私の親友がいるから。そこの病院をたよるといいよ、環境もとっても良い場所だから安心できると思う」
「有難うございます…」

 少しほっとしたような目をして、セシレーヌはお腹に手を当てた。

 そこは細身のセシレーヌにしては、ちょっとふっくらしている感じが受ける。

「夢を見ているようです…。恋愛も結婚も諦めていたので、まさか自分が子供を産むなんて考えもしなかったから…」
「子供は親を選んで来るんだよ。でも、もう少し自分の体には気を付けてくれよ。3ヶ月まで気づかないなんて、ちょっと無頓着だから」
「はい…」

 どうやらセシレーヌは妊娠しているようだ。
 相手は…ジュニアールのなのだろうか?


 ドアの外にいたミディスは驚いた顔をしていたが、すぐさま嬉しそうに微笑みを浮かべた。


 看護師が待っている場所へ戻って来たミディスは、とっても嬉しそうな顔をしていた。
 そのまま病室へ戻ったミディスは、明日の退院準備を始めた。
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