グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
報道ではイディアが流した全ての報道は嘘であった事が報じられた。
イディアの妊娠した子供は全く別の男性の子供で、王室とは無関係であると。
その報道に国民もホッとしていた。
ようやく平穏な日々が戻ってきつつあるそんな日だった。
2日後。
いよいよ南グリーンピアト行きの船が出航する日が来た。
重たい荷物はセドリシアが運んでくれて、セシリアは身軽な格好で港までやって来た。
ちょっとお腹も目立ってきたようで、ゆったりとしたワンピース姿に踵がない靴を履いているセシリア。
短かった髪が伸びてきて、可愛いボブヘヤーになったセシリアは年齢よりもかなり若く見える。
船に乗り込んだセシリアはデッキに出て、辺りを見渡していた。
青天の空の下。
ずっと住んでいたグリーンピアトに、そっと別れを告げたセシリア。
少し目立って来たお腹にそっと手を当てたセシリアは、そこから暖かいエネルギーを感じた。
「…ごめんね。…大きくなったら、お父さんの下に必ず返すから。それまで、一緒にいてね…」
そっとお腹を撫でながら呟いたセシリア。
間もなくして出発の汽笛が鳴り響いた。
港で見送る人達が手を振って送り出してくれる。
デッキから見送る人達を何気なくセシリアは見ていた。
グリーンピアトから出るのは初めてだけど…新しい出発なんだ…。
そう思いながら離れて行く港を見ていた。
「セシリア、そろそろ中に戻った方がいいよ。潮風は冷たいから、身体が冷えてしまうからね」
「はい…」
セドリシアに言われて、セシリアはゆっくりと歩き始めた。
どんどん遠くなり港が見えなくなってゆくのを背に、これで良かったのだと背知りは自分に言い聞かせていた。
すると…。
動いていた船がゆっくりと止まって行った…。
「なに? 」
「どうしたんだ? 」
「なんで止まったの? 」
乗船客が驚いている中。
ゆっくりと近づいてくる大きな豪華客船が目に入った。