グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~
 
 夜になり。

 同じ寝室で寝る事になったジュニアールとセシレーヌ。

 あの夜は勢い任せで結ばれてしまったとセシレーヌは思っていた、そしてそれは一世の夢だからもう覚めてしまったと思っていた。
 
 まさか船を止めてまでジュニアールが来てくれるとは思わなかった…。

「セシレーヌさん…」

 声かけられるとセシレーヌはドキッとなった。

 ベッドの端に並んで座ったジュニアールとセシレーヌ。
 ジュニアールはシンプルなブルーのシルクのパジャマで、セシレーヌはちょっとお腹が目立ってきた事からピンクのワンピースのパジャマを着ている。

 パジャマ姿で並ぶなんて…ちょっと恥ずかしいとセシレーヌは思っていた。

「いえ…もうさん付けは必要ありませんね。…セシレーヌ…」

 改めて呼ばれると、セシレーヌはまた赤くなった。

「これを、お渡ししますね」

 そっとセシレーヌの左手をとったジュニアールは、枕元に置いてあった指輪ケースから指輪をとり、そっとセシレーヌの左手の中指にはめた。

 サイズはちょっと緩い感じがするが、ピッタリセシレーヌの指にはまった。
 綺麗に七色に輝くダイヤが、大きすぎる事もなく小さすぎる事もない、ちょうどいいサイズで輝いている。

「本当は、退院するときにお渡ししたかたのですが。オーダーしていたので、間に合わなかったのです。その後に、あの騒動でゴタゴタしてしまって…本日に至り、申し訳ございません…」
「いいえ…。こんなに素敵な指輪を頂けるなんて…夢のようです…」

「その石は、王家に伝わる秘宝で作られていますので。他の誰にも真似できません。この先、秘宝がずっと力を貸してくれますよ」
「そうなのですね。見たこともない輝きで、びっくりしました」
 
 指輪を見ているセシレーヌを、そっと抱きしめたジュニアール…。

「こんなに人を愛したのは、久しぶりです。ずっと、再婚はしないと決めてきました…。それは、亡くなったメイシスの為だとずっと自分に言い聞かせて来たからです。…」

 ギュッと抱きしめているジュニアール腕に力が入ったのを感じたセシレーヌ。
 その力から、本当は一人で不安だった気持ちが伝わって来た。
 一国の国王として、国を一人で護る事は想像できないくらい大変だったはず…それでも、亡くなった愛する人の為にとずっと頑張って来たのだろう…。

「生まれつき心臓が弱く、メイシスと結婚するときも正直迷惑をかけるのではないかと不安もありました。…メイシスが亡くなりずっと一人で国を護る中、なんども倒れそうになったのは事実です。その度に、治癒魔法で自分で治癒して乗り越えてきました。それが、再婚しないと決めたメイシスとの約束でもあると思っていたのですが。弱っている上に魔力を使えば、限界が来るものです…。生きるか死ぬかのせとぎわで、選択されたのがあの手術でした…。手術を受ける決意をしても、正直怖くて。ミディスを残して、私が先に逝ってしまったらと思っていました。でも…貴女が一緒に来てくれて…貴女を見た瞬間に「もっと生きていたい! この人を幸せにしてあげたい」と、強く思ったのです」
「…そうだったのですか…」

「人を愛すると、強くなれると言われます。…私が、貴女を選んだのはメイシスの心臓を受け継いでるからではなく。貴女の魂に惹かれたからです。だから、これからは誰にも引け目を感じることなく。貴女自身で生きて下さいね」
「はい、そう決めています。私は…私でしかいられませんから…」

 そっと身体を離したジュニアールは、熱い視線でセシレーヌを見つめるとそのまま唇にキスをした…。
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