グリーンピアト物語~命を紡ぎ愛を紡ぐ奇跡~

 翌日。
 予定通り手術が行われた。

 ジュニアールは麻酔で眠りに着く前に、セシレーヌに「大丈夫ですよ」と微笑みかけてくれた。

 手術の為に、今日は日頃右目にはめている眼帯を外しているセシレーヌ。
 
 セシレーヌの右目は酷い火傷の跡のように、ただれている。
 まるでお化け屋敷に出てくる妖怪のような酷さが。
 ただれた目でちゃんと見えているのだろうか? と、疑問を感じるほどだ。

 大き目のマスクで口元は隠れているが、首元にも火傷の跡が残っていて痛々しい姿た。

 いつも首が隠れる服ばかりで、右目に眼帯を当てているのはこの酷い姿を隠しているためのようだ。


 セシレーヌが執刀に入り、クラウドルが助手となり手術が始まった。

 執刀に入る前、セシレーヌはとても緊張した表情をしていたが手術が近づいてくるとだんだんと落ち着きを取り戻してきて大丈夫と思えるようになった。
 ただジュニアールの事を助ける事だけを考えて手術に挑んでいた。

 セシレーヌにとっては初めてと言って良いくらいの、大手術で、まさか国王様の執刀をするとは夢にも思わなかった。
 クラウドルが助手として一緒に手術を単相して欲しいと頼んできて、助手ならいいかと引き受けただけだった。

 麻酔で眠っているジュニアールは、とても穏やかな表情で眠っている。
 
 眠っているジュニアールはメイシスの夢を見ていた。
 メイシスと初めて出会ったのは、音楽祭の時だった。

 両親を大学在中に病気で亡くして、メイシスは残された遺産で音楽家への道を目指し続け大学卒業ど同時に音楽祭で最優秀賞を受賞した。
 メイシスはヴァイオリン奏者で、いつも音楽祭では最後まで残っていたがほんの少しの差で最優秀賞を受賞するに至らないままだった。
 大学卒業後に出た音楽祭は、これが最後だと決めていた。
 いくら両親が残してくれた遺産があっても、これ以上は音楽家への道へ投資するのは無理だと判断してこれで最優秀を受賞できなければ諦めて自宅で子供達にバイオリンを教えながら暮らしてゆこうと決めていた。
 しかし最優秀賞を受賞した事で、メイシスは一躍有名になり色んなところからオファーが来るようになった。

 ジュニアールは初めて音楽祭を鑑賞しに行った。
 そして最優秀賞を受賞者んいトロフィーを渡す役割を受けていた。

 トロフィーを渡す為にメイシスに会ったジュニアールは、一目見た瞬間に胸がキュンとなりメイシスに恋をした。
 しかしメイシスは、身分が違う為ずっと断り続けていた。

 諦めないジュニアールを何とか突き放そうとして、南グリーンピアトへ行こうとしたメイシスを引き止めたジュニアールに押されてやっと結婚を承諾した。

 出会ってから3年の月日が流れていた…。
 
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