何度だってキミに、好きを届けたくて。
「眞尋くん、ありがとう。私のこと好きって言ってくれて」



私は真っすぐに眞尋くんを見つめ返す。

眞尋くんは自分の気持ちを伝えてくれた。

だから、私も気持ちを伝えよう。

眞尋くんの気持ちには応えられない、って……。



「でも、ごめん。私、今も春佳くんのことが好きなの」



眞尋くんの手が私の頭からそっと離れる。

その瞳は揺らいでいて、なにかを我慢しているようにも見えた。

私はこぶしをぎゅっと握りしめる。


今まで味わったことのない気持ちになった。

告白を断るってこんなに胸が痛いんだ。



「そんな顔するなよ」



眞尋くんは痛々しい笑顔を浮かべた。



「そんな顔させたくて、告白したんじゃない。伊織には笑っていて欲しいんだ」

「眞尋くん……」

「春佳と、頑張れよ」



眞尋くんはそう言って、私の横を通り過ぎた。

バタンと屋上の扉の音がする。

振り返れば、眞尋くんの姿はなかった。


ごめん、眞尋くん。

……私を好きになってくれてありがとう。
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