何度だってキミに、好きを届けたくて。
うそ、でしょ……?

なんで、春佳くんが。

救急車に?


私は目の前に広がる光景に震えるばかりだった。


あわただしく救急隊員が動いている。

みんな春佳くんの名前を叫んでいる。

他校であろう生徒たちは、何事かと横目で見ながら体育館に入っていく。


動くことも、駆け寄ることもできず、固まってしまった私。


春佳くんは、大丈夫なの……?


立ち尽くす私の横を通っていた救急車。

大きなサイレンが遠ざかっていく。



「伊織っ」



声の主は眞尋くんだった。

眞尋くんは私の姿を見つけると駆け寄ってきてくれた。

その目は真っ赤になっていて、涙が浮かんでいた。


こわばっている表情。

私も同じような表情をしているんだろう。



「眞尋くん……」



眞尋くんが私の目の前に立つ。

私が落とした鞄を拾って手渡してくれる。

そして、私の手を引いて歩き出す。

私は状況が読み込めず、ただただ眞尋くんに引っ張られるようについていくだけだった。
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