何度だってキミに、好きを届けたくて。
春佳くん、私のことをお母さんに話してくれていたんだ……。


嬉しい。

だけど、張り詰めたような空気の中では素直に喜べなかった。



「夜も一緒に走ってくれているって。……応援してくれている子がいるって」

「……っ」



それからお母さんは、自らの気持ちを話してくれた。


私は視線を前に戻す。

フロントガラスの奥に見える景色は、なんだか泣いているようにぼやけて見えた。



「春佳の難病を宣告されたときは、春佳が幼い頃から好きだったバスケもやめなさいって言ったわ。だけど、あの子は、続けるって言って聞かなくてね」

「……」

「病気だと言われたのは、あの子が小学6年生のときよ。将来のためにも、自分の体を大切にしてほしかった」



でも。

あの子が大好きなバスケを続けてくれて良かった。


そう、お母さんは口にした。



「小学生の頃は無理して笑っていた春佳だけど。……中学生になってから、あの子は心から笑うようになったの」

「そうなんですね、」

「春佳にとってバスケも大切だけど、それと同時に、大切な“何か”が出来たのかしらね」

「大切な、何か……?」



お母さんはふふっと、涙を浮かべながら笑った。
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