何度だってキミに、好きを届けたくて。
「病院、着いたわよ」

「あ、ありがとうございますっ」



お母さんは結局、”大切な何か”については教えてくれなかった。

気になるけど、今は春佳くんのことが心配だ。


私はお母さんと車から降り、駐車場を出た。

少し歩けば大きな病院。


ここに春佳くんがいるんだ……。

私たちは自動ドアをぬけて、受付の看護師さんに春佳くんの容体を聞いた。



「伊吹 春佳の母親ですっ。春佳は、今どこに……」

「すぐに担当医を呼んでまいりますので、少々お待ちください」

「お願いしますっ」



お医者さんが来るまで、私とお母さんは一言も喋らなかった。


消毒の匂いがする病院。

先ほどまでとは違った緊迫感。

感じたことのない恐怖。

こわばる私の体。


そんな私に気づいてくれたのか、お母さんは私の手をぎゅっと握ってくれた。

……お母さんの手も震えているように感じた。


看護師さんはすぐに担当のお医者さんを呼んでくれ、春佳くんの病室に案内された。
< 146 / 187 >

この作品をシェア

pagetop