何度だってキミに、好きを届けたくて。
「私は春佳に振られたのっ! あんたなんか、いなければ!」



愛美さんの手が伸びてきた、と思ったのは一瞬のことで。

気が付けば、私のシャツの襟を愛美さんが思い切り掴んでいた。


叩かれるかも。

そう思って目をつぶったときには遅くて。

パシンッ、と力強い音がこの場に響いた。


……けど。

痛く、ない?


そっと、目を開けると……。



「お兄ちゃん!?」



近くの高校の制服を着た男の人の背中が、目の前にあった。

男の人の手が、愛美さんの手を掴んでいる。


私をかばってくれた……?

パシンッ、と響いた音は、愛美さんの手を掴む音だったんだ……。



「乃亜ちゃん、大丈夫?」



愛美さんに”お兄ちゃん”と呼ばれた彼が振り返る。

助けてくれた彼の顔を見れば……。



「市川さん!?」



喫茶店の市川さんだった。


莉緒ちゃんの好きな人……。

って、もしかして。
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