何度だってキミに、好きを届けたくて。
「ねえ、乃亜。……もう1回、」



私は春佳くんから顔をそらしたまま、こくんと頷く。

そんな私の頬に春佳くんの手が触れる。

こっち向いて。

というように、頬に添えられた手。

私はもう一度、春佳くんの目を見つめる。


顔が近づく。

唇が触れるか、触れないかの瞬間。


病室の扉が勢いよく開いた。

びっくりして思わず離れる私たち。



「乃亜っ、聞いてよ! 市川さんが男バスのマネージャーの頭を撫でていたの……っ!」



莉緒ちゃんが勢いよく病室に飛び込んできて、私に抱き着く。

その目は真っ赤で、泣いているようにも見えた。



「あのふたり、どういう関係なのよぉ、」

「えーと、」

「しかも、そこにもう1人女の子がいてさー」



それって。

もしかして。



「……莉緒ちゃん。それって今日の放課後の話?」

「そうだよぉ。教室の窓から見えたの!」



私に泣きつく莉緒ちゃん。


私と春佳くんは顔を見合わせて笑った。

莉緒ちゃんが本当のことを知るのは、もう少し先の話かな……。
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