何度だってキミに、好きを届けたくて。
授業と授業の間の休み時間。

私、伊織 乃亜は、ぽーっと窓の外を眺める。

窓際の席から見える校庭の木が緑に染まりつつある、5月。

私の教室は3階にある。


高いところから眺める景色は、遠くの方まで見えるから私はすごく好き。

窓を開けていると風が入ってきて気持ちがいい。

景色も良くて、新緑の香りがする空気も感じられるこの席が好き。


窓際の1番前の席。

この席を気に入っている理由は他にもある。



「春佳。次の授業、体育館でバスケだぞ」

「おーっ。今、準備する!」



私の後ろの席から聞える会話。

伊吹 春佳くんの声だ。

明るい声の中に優しさが含まれている、そんな声の持ち主。

春佳くんは私が中学1年生の頃から密かに、恋心を抱いている相手。


私が春佳くんを好きになったのはちょうど今の時期だった。

困っていた私を助けてくれた春佳くん。

この南部中学校はクラス変えがないから、春佳くんとはずっと同じクラス。

それから2年間、中学3年生になった今も私は春佳くんに想いを寄せている。

だけど、自分から話しかけるとかアピールするとかできなくて、私は絶賛片思い中。
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