何度だってキミに、好きを届けたくて。
「乃亜。……顔、上げて」



春佳くんのいつもと変わらない声に、ほんの少しだけほっとする。

それでも緊張は解けていない。

恐る恐る顔を上げると、春佳くんは今にも泣きそうな表情をしていた。


……それは、どっちの表情なの?

私は、振られるの?

それとも……。



「ごめん」

「……っ、」

「ごめん。乃亜の気持ちには応えられない」



目の前が真っ暗になった。

明るかった夕日が、くすんだように感じた。

手の震えがぴたりと止まる。

その代わり、すっと冷水を浴びせられたように体が冷えたような感覚になった。



「乃亜のこと、女の子として意識したことなくて」

「っ、」

「その、なんていうか。恋愛対象として見ていなかった、から」




女の子と意識されていなかった。

その言葉がぐさりと胸に刺さった。
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