お邪魔虫にハッピーエンドを


 ***


『ユキ、白田さんって知ってる?』
『白田? ああ……そういえば前に、桜葉と付き合ってるとか噂になってたような。まあ、デマだったんだけど』

 
 あれから、白田さんという人についてユキから聞いた。

 名前は白田こころさん。
 どうやら体育祭のとき、足を怪我した白田さんを景が保健室まで運んだことで、そんな噂がたったのだという。

 にしても、こころって……可愛い名前。


『その子がどうかしたの? てか、そもそもなんで杏子が知ってんの』
『あー、うん。景がね、その子のことをちょっと話してたから』
『あの、桜葉が?』

 ユキもなにか違和感を覚えたらしく、私に聞き返してくる。


『……まあ、景だって女の子の友達ぐらいいるって。もう高校生なんだし! それより、ユキに話したいことがあったんだよね』

『え、なに?』

『実は……来年の春には日本に帰れそうで』

『まじ!?』

『うん、それで。学校も中央高校に編入したいんだけど、偏差値とかどうだろうって思って』

『全然問題ないっしょ! あんたならいける! えー嬉しいんだけど……っ』

 ユキの感激した様子に嬉しくなる。
 でも、頭の中では言いようのない不安が付きまとっていた。

 
 帰国は来年の春。

 両親から来年に合わせて日本に戻ろうという話をされたとき、それじゃ遅いと私が感じていた。

 だから私は、一人で先に日本に戻ることを選んだ。

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