お邪魔虫にハッピーエンドを



 中学の頃よりもさらに伸びた身長で、すぐに見つけることができた。

 ううん、身長の問題じゃない。
 たぶん私は誰よりも早くに、人混みの中で景を見つけられる自信がある。

「景……っ!」

 気がつけば、頭で考えるよりも先に体が動いていた。
 スマホを握りしめたまま、景のもとに駆け出していて。

 本当は正門から出てきたところで声をかけるはずだったのに、こんなに目立つ行動をとってしまっている自分に驚いた。

 でも、やっと会える。
 その時は嬉しさと高揚感でいっぱいだった。


「…………?」

 自分の名前を呼ばれたことで、景の視線が私に向けられる。
 その表情は、ほんのりと驚愕に染まっていた。

「……景っ、わっ!?」

 久しぶり、元気だった?
 それとも「会いたかった」とストレートに言葉にしてしまおうか。

 そんなふうに浮かれていた私の頭は、コンクリートのくぼみにつま先が引っかかったことで現実に引き戻される。

(う、うそ!? ぎゃー! 転ぶっ………!!)

 ぐらりと足元の自由がなくなって、突然のことに声も出なかった。

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