お邪魔虫にハッピーエンドを



 なんて大ドジすぎる再会だろう。
 こんなはずじゃ……と思いながら、私は転倒の衝撃に備えて身を固くした。

 けれど、いつまで経っても痛みはなかった。

「ご、ごめ……」
「――杏子?」

 耳元で響く声に、ハッとした。
 それもそのはず、私は目の前にいた景に抱きつくことでなんとか転ばずに済んでいたのである。

 そっと見上げると、懐かしい景の顔が近くにあった。
 どうしてここに、と驚いた景に、私は笑みを浮かべる。

「…………久しぶり、景」

 思い描いていた再会とは違ったけれど、景の顔を見たらそんなこだわり全部吹き飛んでいた。

 回避できない状況だったとはいえ、抱きしめる形で私を受け止めてくれたことに、胸がきゅっと高鳴る。


 こうして私は、景と再会した。

 そしてこの衝撃の再会は、しばらく生徒たちの間で噂されることになる。

 事実は躓いたところを景が抱きとめたくれただけなんだけど、周りからはそう見えていなかったみたいで……。

『アメリカ帰りの帰国子女で編入生で桜葉景の幼なじみが、大胆にも再会のハグを正門でしてみせた』──と、騒がれることになるのだった。



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