お邪魔虫にハッピーエンドを

　嫉妬なんて、したことがなかった。

　でも、そのときは確かに芽生えていた嫉妬心に、私は突き動かされていた。

『白田さんって、景のことが好きなの？』

『……へ！？　そ、そんな、わたしなんかがそんな、桜葉くんを、す、す、好きだなんて……』

『……そっか。そうだよね。だって景、白田さんのことはただの友達って言ってたし』

『とも、だち……』

『そう、友達。だけど景って、これまで女の子の友達を作ることもほとんどなかったんだよね。だから、これからも友達として仲良くしてくれたら嬉しいな』


　いや、何様だよ、私。

　景は最初のころ、私に白田さんのことを「ただの友達」と言っていた。
　そんなの照れ隠しだということは知っていたし、それからすぐに好きな人だと教えられた。

　だからこれは、私の意地の悪い牽制だった。

　景は恋愛感情で誰かを好きになったことはない。

　だから、自分の気持ちに気づいていても「付き合ってほしい」と言えるようなタイプじゃなかった。

　それならと、私は白田さんに近づいて、遠回しに牽制をしたのだ。


　最悪、性格悪い、本当に最悪。
　でも、なりふり構ってられないと思った。

　牽制の効果もあったのか、白田さんは景を前にしてもよそよそしく逃げるような行動ばかりとるようになった。

　心底、ほっとした。
　これで少しは時間が稼げると思った。
　邪な考えばかりが浮かんで惨めになったけど、でも諦めきれなかった。


『……君、あの子の邪魔するのやめたら？』

　そんなとき、笑顔で私に言ってきたのが、蓮見くんだった。