お邪魔虫にハッピーエンドを
「いや、最低だとは思わないよ」
「ユキは優しすぎる……」
「いやいや。だってあたしは白田さんをよく知らないし、杏子の味方だから。杏子がどんだけ桜葉を想っていたか分かってる。それで、どんだけ杏子が努力したのかも」
そう言って、ユキは私の顔をじっと見つめる。
「それにあたしはひねくれてるからさ。好きな人が取られそうになってたら、何とかしてでも引き止めたいって思うよ。恋愛って、そんな綺麗なことばかりじゃないでしょ」
「……ふふ、さすがユキ。経験者は語るって感じ」
「言っとくけどあたしは経験豊富じゃないからね?」
少しの冗談を言い合いながら、楽しい時間は過ぎていく。
ユキはこう言ってくれているけど、私がしていたことは決して褒められたことじゃない。
恋は盲目なんて、本当にうまい言葉だと思う。
「まだ、しばらく引きずりそう……」
「いいんだよ、それで。そんな簡単に気持ちは切り替わらないでしょ」
「……うう〜」
「よしよし。ほんとに頑張ったね、えらいえらい」
テーブルに突っ伏すると、ユキがぽんっと頭を撫でてくれる。
未練がましいけど、私はまだ景が好き。
長年くすぶり続けたこの気持ちは、そう簡単に消えそうにない。
「にしても、白田さん……これから大変だね」
「え?」
「だって、桜葉だよ? 今まで何人の女子が振られてきたことか。そのモテ男が選んだ子が、白田さんなわけでしょ」
「……まだ、学校の子には知られてないみたいだけど」
「そんなの時間の問題でしょ。白田さんってまじで大人しめの子だし。付き合ってることが周りに知られたら女子が黙ってないかもよ」
ユキの話を聞きながら、私は密かに思う。
好き同士で結ばれた二人なのに、どうして周囲がイチャモンをつけるんだろう。
だって、白田さんを叩いたところで景と付き合えるわけじゃないと思うのに。
(……って、だから私が言えなことじゃないでしょうが。はあ……憂鬱だな)
明日から新学期、傷心中の私は何事もなく過ごせるようにと祈るばかりだった。