お邪魔虫にハッピーエンドを
story①
逢沢杏子のこれまで1
逢沢杏子、十六歳。
杏子という名前は幼い頃からコンプレックスで、今も自己紹介のときは語尾の声が小さくなっちゃう。
景とは家が隣同士で、生まれた時から二人仲良く一緒に育った。
そして、恋心に気がついたのは、小学生の頃だった。
『でーぶ、でーぶ! 餡子いっぱい食ってるからそんなにでかいんだろー!』
小学一年生。
私が名前をコンプレックスだと思うようになったのは、同じくコンプレックスだった体型をいじってくる男子の影響である。
両親が共働きで、和菓子屋を営む祖母(おばあちゃん)のもとによく預けられていた私は、そんなふうにからかわれることが多くて。
体型といっても幼稚園の頃は、自分の見た目なんてそれほど気にしたことなかったし、太っているだなんて自覚もなかった。
でも、学校というより多くの人たちがいる集団生活のなかで、私は段々と自分がどんな体型なのかを知る。
子供は案外残酷なもので。
特に男子は見た目のことでからかってくる子たちばかりだった。
それに影響されてクラスの女子も仲間はずれをするようになっていった。
『お前ら、こんど杏子を泣かしたら絶対にゆるさないからな』
小学校に入って早々、クラスで孤立していた私を助けてくれたのは、景だった。
勉強、スポーツ、どちらも得意な景は、学年中の人気者で、そんな彼が私を庇ったことによってイジメはなくなった。
『杏子、だいじょうぶ?』
『うん……でも、けーちゃんが悪くいわれちゃうよ。わたしなんかと一緒にいたら……』
『そんなの気にしない。だから何があったら言って。杏子はおれがまもるから』
景のことはずっと好きだった。
でも、恋を自覚したのはこのときからだったと思う。
その後、すっかり内気な性格になってしまった私は、それから卒業まで幼稚園から一緒だった友達のユキ以外と打ち解けることができなかった。