真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
*第一章*
羽入さんのことが、ほしい、です
「都合の良い彼氏がほしい!」
お箸が折れそうなほど力のこもった拳を掲げて友達が高らかに宣言する。
ほのぼのとした昼食時には似つかわしくない話題に、わたしは苦笑で答えることにした。
「え~なにそれ」
「める、あんたもそう思わない!?」
「思わないからこんな顔なんだけどなぁ?」
友達の木葉ちゃんはわたしの肩を掴んで力強く揺さぶる。
目は血走っており、彼女の思いの丈がよくわかった。
まぁまぁと落ち着くようにたしなめて、冷静に話を聞き出す。
「どうしたの、急に?」
言えば、木葉ちゃんは悲しそうにお弁当へ視線を落とした。
手入れの行き届いた長い黒髪が影を作り、見た目だけで言えばまるで深窓の令嬢だ。
「……あのさ、あたしこの間彼氏にフラれたじゃん?」
「そうだねぇ」
「だから次は都合の良い彼氏がいいと思って」
「思考回路十段階くらい飛ばしたの?」
都合がよかったら誰でもいいってわけではないんだよね?
木葉ちゃんならちょっと笑いかければ落ちてくれる人はいっぱいいるだろうから、心配ないと思うんだけど。
具体的には、どんな人だったら木葉ちゃんの言う『都合の良い人』なんだろう。
そう問えば、木葉ちゃんは教室の隅でわたし達と同じように前後の席でお弁当を食べるグループを指差した。
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