真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
*第三章*
全部見せて?
午前九時。
――ピン、ポーン。
ゆっくりとボタンを押して、離す。
次の瞬間。セミの合唱をかき消してしまうかのごとく、ドタドタと家の中から足音が聞こえた。
バンッ! 玄関のドアが開く。
「お、おはよう、ござい、ますっ!」
まだ何も起こっていないのに、既に顔が真っ赤の一悟くんが登場した。
「おはよう一悟くん、元気だね~」
夏休み最初の一悟くんは、少し挙動不審らしい。
そういうところも可愛いんだけどね。
「と、とりあえず中に入って」
「うん、お邪魔するね~」
自然に腕を引かれて家の中に入っていく。
だんだんと自分の口元がだらしなく緩んでいくのがわかって、すぐに修正した。
少し時間が経ったから、もう気持ち悪い笑みは浮かべないよ。
わたしは今日のために、更なる準備を重ねてきたからね。
朝から晩まで、ずっと一緒。
今日はそういう日なんだから。