真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
*第三章*

全部見せて?



 午前九時。


 ――ピン、ポーン。


 ゆっくりとボタンを押して、離す。


 次の瞬間。セミの合唱をかき消してしまうかのごとく、ドタドタと家の中から足音が聞こえた。


 バンッ! 玄関のドアが開く。



「お、おはよう、ござい、ますっ!」



 まだ何も起こっていないのに、既に顔が真っ赤の一悟くんが登場した。


「おはよう一悟くん、元気だね~」


 夏休み最初の一悟くんは、少し挙動不審らしい。


 そういうところも可愛いんだけどね。


「と、とりあえず中に入って」

「うん、お邪魔するね~」


 自然に腕を引かれて家の中に入っていく。


 だんだんと自分の口元がだらしなく緩んでいくのがわかって、すぐに修正した。


 少し時間が経ったから、もう気持ち悪い笑みは浮かべないよ。


 わたしは今日のために、更なる準備を重ねてきたからね。



 朝から晩まで、ずっと一緒。


 今日はそういう日なんだから。



< 111 / 167 >

この作品をシェア

pagetop