真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 冷蔵庫の中身を確認した結果、お昼はオムライスに決まった。


「ケチャップ入れるね~。これくらい?」

「ありがとう。後は俺がやるから、先に座って待ってて」

「いいの? じゃあ、待ってるね~」


 にこっと笑ってダイニングに向かった羽入さん。


 「モカちゃ~ん」と話しかけている声が聞こえる。


「うんうん、そうだよねぇ。キッチンに立つ一悟くん素敵だよねぇ~……♡」

「っ!?」


 動揺して卵が失敗しそうになった。


 何を話してるのかと思ったら……。


 ちらっと確認してみると、笑顔で手を振ってくれる。


 いつも通りの、ふわふわ朗らか。


 だけど俺から攻めたら、ふにゃふにゃとろとろになる女の子。


 ……恐ろしすぎでしょ。


 早くなる鼓動に蓋をして、卵で包んだものをお皿に盛り付ける。ほわっと白い湯気が立ち込めた。


 うん、我ながら綺麗にできた。


「良い匂~い」


 羽入さんも待ちきれなさそうにイスへ座っていた。


「お待たせ」

「わ~! すご~い! おいしそ~!」


 褒め上手な羽入さんは、小さく手を叩きながら目を輝かせてくれる。


「早く食べよ食べよっ」

「そうだね。上からケチャップかける?」

「あ~……うんっ、ちょうだい」


 そうして俺からケチャップを受け取ると。


「今から何書いてるか早押しクイズね~?」

「えっ、わ、わかった」


 俺の前に置いていたオムライスに、何かを書き始めた。


 向かい合って座っている俺達。俺の向きに合わせて書こうとしているのか、動きがぎこちない。


「ん、む、難しいねぇ」


 なんだろう……。オムライスに垂らされていく赤い線を目で追う。


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