真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 寝起きのわたしより口が回っていない木葉ちゃんの説明を噛み砕くと、こうだ。


 バイト先の人達と海に遊びに行くことになった木葉ちゃんは、その中に前々から狙っていた先輩がいたらしい。


 どうにか二人っきりになろうと策を練っていたら、突然目の前に有明くん家族御一行が現れて。


 知り合いならと気を遣った先輩が離れていき、有明くん家族も有明くんだけを置いてどこかへ行き。


 有明くんは二人分のかき氷を買いに離れている。


 パニックになった木葉ちゃんはわたしに電話してきたというわけだった。


 おお~、そこで逃げる選択肢がないだけ成長だよ、木葉ちゃん。


「もう運命って捉えるしかないねぇ」

『バカなこと言わないでよっ! なんとかして先輩達と合流したいのに、もうどうしたらいいのか、わ、わからなくて……っ』

「まぁ、ずっと有明くんといるわけにもいかないよね~」


 木葉ちゃんは先輩達と海を楽しみに来たわけだし。


『でしょ!? なんか良い感じに説得できないかな……』

『和泉さん』

『ヒィッ!?』


 電話の向こうで木葉ちゃんが悲鳴をあげる。


 有明くんが戻ってきたみたいだった。


『誰かと話していたか?』

『や、やっ、別にっ?』

『ん、そうか。はい、和泉さんはメロンでよかったよな』

『あああありがと……』


 木葉ちゃんは通話を切らないまま有明くんとのやり取りを続ける。


 なんだろなんだろ。会話を盗み聞きしてるみたいで、ドキドキするね。


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