真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
木葉ちゃんが通話を切らないってことは、聞いててもいいってことなんだよね。
『座って食べよう。あっちに行かないか?』
『う、うん……』
わたしを介さない二人の会話。もっと木葉ちゃんが発狂するのかと思ったけど、意外に成立している。
あんまり構いすぎちゃうのもよくないんだなぁ。
移動する二人の間に言葉は交わされず、周りの喧騒だけが聞こえてくるようになった。
そんなとき。
スマホの画面に通知が一つ飛んでくる。
『羽入さんの都合が合えばだけど、お昼どこかに食べに行かない?』
一悟くんからのラインだった。
迷いなく承諾……したけど、自分がまだなんの用意もできていなかったことを思い出す。
すぐさま通話はミュートにして、ワイヤレスイヤホンを付けながら支度を終わらせた。
そんな約十五分間。木葉ちゃんと有明くんの会話は、
『えっと、美味しい、な?』
『う、う、うん』
というやり取りで途切れていた。
あまりにも弾まなすぎだねぇ……。
そうして通話時間だけが長くなっていき。
『める、空気やばいってぇ……っ!』
「せっかく話題をふってくれてるのに素っ気ない返事しかしてないからだよ~?」
有明くんがゴミを捨てにいったタイミングで、わたし達の会話が再開する。
わたしは待ち合わせのファミレスへ移動するために外を歩いていた。