真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 ふっ、と笑った息が聞こえた。


『俺もさっき見つけたばかりなんだが……もうバレているのか』

「ただの勘だけどねぇ」


 有明くんは人を気遣ったり助けたり、そういうことができる人だって知っちゃってるから。


 木葉ちゃんにそうしないのは不自然かな~って思っただけ。


『“先輩”と並ぶ和泉さんを見て、胸がざわついてしまったんだ』

『え、な、なっ!?』

『羽入さんの言う通り、見向きもされなくなるのが酷く怖くなって』

『ちょ、ちょっと!?』

『そこで気付いたんだが――』


 隣で焦っているであろう木葉ちゃんを気にせず、有明くんは爽やかに言い放つ。



『おそらく、いや確実に。これは恋だ』

『へぇあ……!?』



 わぁ……。


 そうやってはっきり言えちゃうの、素敵だなぁ。


 嬉しさが込み上げてニコニコしちゃうね。


「そっかそっか、うん。いいねぇ」

『あぁ。俺もいいものだと思……あっ。すまない、和泉さんが逃げてしまったから追いかける』

「頑張ってね~」


 最後にバタバタと駆ける音がして、通話が終了する。


 そうなんだ。恋なんだ。恋なんだねぇ。


 そうなってくると状況は変わってくる。


 猫好きと野良猫じゃなくて、ただの片想いしてる男の子と友達の女の子だから。


 木葉ちゃんが本気で嫌がらない内は応援したいね。


 ニコニコニヤニヤが治まらないわたしに、一悟くんが微妙そうにしている。


「正と、なんの話?」

「んふふっ、お店に入ってからじっくり教えるよ~」


 一悟くんの背中をグイグイと押して入店した。


 ごめんね木葉ちゃん。わたし、ちょっとだけ面白くなってきちゃったかも。


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