真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
廊下からせわしない足音が聞こえる。
えっと……とりあえず服を着ようかな。
ペットの下できちんと折り畳まれている服を拾い上げた。
「!? 俺は、ど、どうしたら……!?」
わたしに倣った一悟くんは、シャツの袖口に頭を引っかけながら小声で叫んでくる。相当慌てているみたいだ。
「わたしが誰か連れてきてること自体は、あんまり気にしないと思うよ~?」
過去に木葉ちゃんともお泊まりしたとき、一応事後報告しておいたこともあったけど。
返ってきたのは「そう、よかったわね」と「めるが楽しかったなら構わないよ」という言葉だけだった。
たぶん、二人が気にするのは……そしてわたしが気にしていることは、
「この家に帰る理由がなくならなかったら、きっとそれでいいんだと思うよ」
二人はわたしを愛していないわけではないし、家に帰ってきたくないわけでもない。
むしろ、毎日こまめにわたしを気にしてくれている方だと思う。
ただ、仕事が忙しすぎて時間が合わないだけで。
だから、わたしは……あんまり家事をしたことがない。
全部完璧にしちゃったら、一人暮らしが成り立ってしまうから。帰ってきてもらう理由がなくなっちゃうから。
一悟くんに作ったクッキーみたいに、やってみれば案外できるんだろうけどね。