真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 廊下からせわしない足音が聞こえる。


 えっと……とりあえず服を着ようかな。


 ペットの下できちんと折り畳まれている服を拾い上げた。


「!? 俺は、ど、どうしたら……!?」


 わたしに(なら)った一悟くんは、シャツの袖口に頭を引っかけながら小声で叫んでくる。相当慌てているみたいだ。


「わたしが誰か連れてきてること自体は、あんまり気にしないと思うよ~?」


 過去に木葉ちゃんともお泊まりしたとき、一応事後報告しておいたこともあったけど。


 返ってきたのは「そう、よかったわね」と「めるが楽しかったなら構わないよ」という言葉だけだった。


 たぶん、二人が気にするのは……そしてわたしが気にしていることは、


「この家に帰る理由がなくならなかったら、きっとそれでいいんだと思うよ」


 二人はわたしを愛していないわけではないし、家に帰ってきたくないわけでもない。


 むしろ、毎日こまめにわたしを気にしてくれている方だと思う。


 ただ、仕事が忙しすぎて時間が合わないだけで。


 だから、わたしは……あんまり家事をしたことがない。


 全部完璧にしちゃったら、一人暮らしが成り立ってしまうから。帰ってきてもらう理由がなくなっちゃうから。


 一悟くんに作ったクッキーみたいに、やってみれば案外できるんだろうけどね。


< 150 / 167 >

この作品をシェア

pagetop