真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


「え……い、いいの? ――いや、よくないよね!? だって俺、はにゅっ、……めるにっ、いろいろしちゃってるわけだし!?」


 一悟くんは無事にシャツから頭を出し、挨拶と謝罪を……! と立ち上がろうとした。


 あ。ま、待って。


「い、一悟くんっ」


 手をガシッと掴む。


「わ、わたしが行くから、ちょっと待ってて?」

「でも……」

「お願い、待ってて」


 言い残し、部屋を出る。


 リビングを覗いたら、キッチンにお母さんがいた。


「あ……お母さん、おかえり~」

「! あ、あら、起こしちゃった?」

「ううん、起きてたんだよ~」


 お母さんの目の下にはうっすらと隈が浮き出ている。


 お化粧で多少は隠せているけど、元が深いためか消せてはいない。


「そう、夏休みだものね。ごめんなさいね、ご飯を作ったらまた出ていかないといけなくて。洗濯物はある? お父さんが帰ってきたら干してもらうから、洗濯機の中に入れておいてね」

「うん、大丈夫だよ~」


 素早く手を動かしながらこっちを見ずに話してくれる光景を、カウンター越しに見ることしかできない。


 癖なんだろうけど、忙しそうに動くから世間話をしていいものか迷ってしまう。


 一悟くんのことも……何も言ってこないあたり玄関の靴に気付いていないのかもしれないし、今言うべきことではないのかな。


「ふふ、久しぶりにめると話せてラッキーだわ」


 そう言って微笑むお母さんの姿に、わたしは十分満足してしまった。


 また、今度でもいいかなぁ……。


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