真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
ガタガタッ。
わたしの部屋の方から物音がした。
ハッと我に返る。それは、遠ざけようとしていた決心を引き戻すのにちょうどいいものだった。
「あら、誰か来てるの?」
「うん。実はそうなの」
「そうなのね。ああ、えっと……『木葉ちゃん』?」
「違うよ、彼氏」
動かしていないと死んじゃうんじゃないかというくらい、動き続けていたお母さんの手が止まる。
気になってくれるんだ……。
「めるも高校生だものね」
その表情は、笑っているようで曇っているようにも見えてうまく読み取れない。
思わず打ち明けたことを後悔しそうになった。
「める」
お母さんがまっすぐとわたしを見る。
こんなに真正面で見つめ合ったのはいつぶりだろうか。
不安な気持ちがじわじわと大きくなっていく中、お母さんが放った言葉は――
「早くここへ連れてきなさい」
「え」
「もう、そういうことは早く言ってちょうだい。初顔合わせがこんなよれよれの姿で、失礼じゃないかしら。そうだ、ご飯も二人分作っておくわね。嫌いなものはあるの? それも聞きたいから早く呼んできて?」
「あ、う、うん」
部屋に戻って一悟くんを呼びに行く。
隠していた緊張がほどけ、ほっと息を吐いた。
「い、一悟く~ん……」
「あっ!」
そして部屋のドアを開けると、ドアに耳を付けてべったりと張り付いた一悟くんがいた。
「あ、あはは……。盗み聞きしようとしてすみません」
綺麗に腰を折り曲げる一悟くんを見て、安心感で胸が温かくなる。
自然と笑顔が込み上がってきた。
「ふふっ……大丈夫だよ~。お母さんも一悟くんに会いたいみたいだから、行こ?」
……遠慮するの、やめてよかった。