真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
お昼休み。有明くんが教室にやって来て一悟くんを見るなり、形の良い眉毛を険しく寄せる。
「一悟、今日誕生日だったのか」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね……?」
一悟くんの机に乗る大量のお菓子。
さっき他のクラスの子が雑に置いて帰ったのだ。
みんなお菓子を投げて口々に「おめでとう」とだけ唱えたら去って行っていた。
情報の回りが早い。
わたしは当事者なのにそこへ入っていけなくて、ほんの少しの疎外感。
木葉ちゃんと一緒に傍観しながら、お弁当をつつく。
「周がめるを好きなのって、まぁまぁ筒抜けだったんだね」
「わたしは全然気付かなかったけどな~。木葉ちゃんは知ってたの?」
「める以外に友達いないから、噂とか回って来ない」
「かなし~」
かくいうわたしも同じようなものだけど。
「周! 彼女できたんだって~?」
またもう一人、一悟くんを祝うために女の子が現れる。
彼女はドアから山なりの軌道を描いてお菓子を投げると、窓側にある一悟くんの席まで届かせた。
そして走って消えていく。
ただのお祝い。そこにあるのは友情だけ。
わかるのに、どうしてかもやもやした。
カバンに手を突っ込んで、一悟くんと有明くんのところへ近付く。