真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
胸いっぱいになった気持ちを味わっていたら、一悟くんが上目遣いでわたしを窺ってくる。
何か言いたそうだったから耳を傾けると、それは嬉しいお誘いだった。
「よかったら、ご飯一緒に食べない……?」
断る理由がない。
少し離れた席でこれを見ていた木葉ちゃんを振り向いて、木葉ちゃんも……と口を開けたところで。
「やだ」
冷ややかな目と声がピシャッと空気を凍らせた。
「なんでぇ~、木葉ちゃん~」
一悟くんの手を振りほどいて木葉ちゃんの元へ戻る。
すると彼女はこっそりと耳打ちをしてきた。
「むり。あんな近くで、有明の顔見られない」
つられてわたしも小声で話す。
「ええっ、好きな顔なんじゃないの?」
「だからこそよ! ここからの距離だったらギリギリ楽しめるけど、間近で見たら失明する!」
「わかんないなぁ~」
一悟くんが不安そうにこちらを気にしている。断りたくないけど、木葉ちゃんを一人にしちゃうのはわたしが嫌だ。
恋人と友達……天秤にかけられちゃった。
「いいよめる、行ってきなよ」
「……わたししか友達いないくせにぃ」
「うん? 表出ようか?」
も~、素直じゃないんだから。
やっぱりわたしには友達を一人にする選択肢はなかった。
ひそひそ話をやめて、一悟くんの近くに行って手を合わせる。