真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 次の日の一悟くんは、まぶたがズンと重くてくっきりと隈が浮き出ていた。


 昨日あのまま寝落ちしちゃって、電話はいつの間にか切れてたんだよね。


 もしかしたら見守っててくれたのかな~……なんて。


「一悟くん、昨日は先に寝ちゃって、ごめんね~」

「ううん……ありがとう……ごめんなさい……」

「どっち?」


 寝不足で様子がおかしくなっちゃってる。


「もうビデオ通話はやめとくね?」

「えっ!? ……っあ、うん! それがいいと思う! ごめんなさい!」


 あからさまに嘘を吐いているのがバレバレだった。彼は嘘が下手らしい。


 何か後ろめたいことがあるのだろう、わたしと目を合わせないようにしている。


「一悟くん? 嘘はよくないよ~?」

「ごめんなさい! 羽入さんの寝顔をガン見する変態でごめんなさい!」

「ずっと見てたの? 恥ずかし~」

「恥ずかしい男でごめんなさい!」

「ふふ……いいよ、許す」


 その代わり、と一悟くんの胸に人差し指を当てた。


「初デート、どこ行くか一悟くんが考えて?」


 人差し指だけなのに、一悟くんの心音がハッキリと聞こえてくる。


 顔が赤いときの一悟くんって、こんなに心臓が早かったんだ。


 不思議と笑みが込み上げる。


「は、はい!」


 一悟くんが元気な返事をしてくれた。


 そんなときに渦巻く、わたしの小さな感情。


 すごく良い感情なはずなのに、わたしはまだそれに名前を付けることができない。


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