真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛

どうやったって……大好きなんです



 待ち合わせ時刻は十三時。


 場所は駅の中に入っている本屋さん。


 一悟くんから送られてきたメッセージを眺め、待ち合わせの本屋さんへ足を進める。


 一面に広がるお店に目を向けながら、ガラスに映る自分の姿を確認していった。


 服装は淡いピンクのワンピース。裾がふんわりと広がっていて可愛い。生地も手触りが良くって、お気に入りだ。


 髪型は、毛先を少しだけ巻いて下ろしてみた。普段から髪は巻いてるけど、学校では軽く二つにまとめてるから雰囲気は変わる。


 後はメイクも。一悟くんの好みがまだわからないから、今日はナチュラルめにした。


 これも全部、一悟くんが喜んでくれるかなって考えて。


 考えれば、他人のためにおしゃれをしたのは初めてかもしれない。


 本屋さんの中に入って、一悟くんのことを探す。


 そこまで大きなところじゃないので、背の高めな一悟くんはすぐに見つけることができた。


 本棚に向かう後ろ姿。制服じゃないから、やっぱりいつもと違って見える。


 刹那、心にほのかなくすぐったさが宿った。


 今すぐに彼の背中に寄り添いたい。そんな衝動が支配する。


 わたしは、その衝動を抑えられなかった。


「一悟くんっ」


 一悟くんの背中にそっと手を添えながら、後ろから顔を覗き込む。


 ビクッと体を揺らすと、一悟くんは手に持っていた本を戻した。


 なんの本を見てたんだろう。


< 26 / 167 >

この作品をシェア

pagetop