真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 驚いて体が跳ねてしまう。


 これじゃ、わたしがうさぎに集中できていないのが丸わかりだ。


「羽入さん?」


 一悟くんもきょとんとした様子でわたしを見つめる。


 その吸い込まれそうな瞳を眺めていたら……気付いた。


 ――わたし、うさぎよりも一悟くんを触りたいんだ。


 思えば今日の分は頭を触っていなかった。


 なるほど、それで調子悪かったのかな。


 解決できたことが嬉しくて、願望通りに一悟くんの頭を撫でる。


「わっ」

「ふふ、一悟くんもふわふわだねぇ~」

「っ……」


 一悟くんは一瞬で耳まで真っ赤になって、大人しくなった。


 うさぎより、一悟くんを撫でた方が癒やされている。


 手放したくないな……。


「……も、もう行こ」


 一悟くんが立ち上がった。


 もう少し堪能しておきたかったけど、一悟くんの限界が来ちゃったのなら仕方ない。


 続けてわたしも立つと、自然に再度手を握り直される。


 ……あれ。


 変な気持ちになるの、戻ってない。


 困ったなぁ……。


 意識を手に引き戻されていると、赤いまま横目で一悟くんが呟く。


「……俺、少しはうぬぼれてもいいのかな」

「うぬぼれ?」

「今のところ、羽入さんは……俺と付き合ってるの、嫌じゃない?」


 初デートでとんでもないことを言われた。


 それは暗に、『別れたいと思ってませんか?』ということで……。


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