真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 色々回った最後に、お土産コーナーに寄った。


 木葉ちゃんに何か買って帰ろうと物色していたところで、うさぎを模した毛玉のマスコットが目に入る。


 白とピンクの二色。黒いビーズのつぶらな瞳が、こっちを見て誘ってきていた。


「可愛い~……」


 わたしはピンクの方を手に取る。素晴らしいモフみにうっとりと見とれて、頭の中で一悟くんの笑顔を思い浮かべた。


 この子、どことなく……


「羽入さんみたいだね」


 一悟くんが言った。わたしと真反対のことを。


「え~? わたしは、一悟くんっぽいな~って思ったよ?」

「お、俺? 俺はこんなに可愛くないよ……! ふわふわした雰囲気とか、羽入さんに似てると思うけど……?」

「一悟くんは可愛いよ? 丸くてきゅるんとした目がそっくりだと思うけどなぁ~?」


 ムッと不満そうな顔をして、一悟くんは白い方のうさぎを持つ。


「じゃあ……俺は勝手に羽入さんだと思ってこれ買うから。羽入さんも、そっちを勝手に俺だと思って持ち歩いてよ」


 一悟くん……。


 頬の色からして、勇気を出して言ってくれたであろう提案にじんわりと熱が滲んだ。


 これがドキドキの証拠だと気付いているわたしは、その感覚が気恥ずかしくて顔を伏せる。


「うん……そうするね」


 学校のカバンにでも付けようかな。


 ピンクのうさぎ。よく顔を赤くする一悟くんにそっくり。


 ……でも、やっぱり犬の方が似てるかも。


< 34 / 167 >

この作品をシェア

pagetop