真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
そうしてお弁当を食べ終わって、授業の準備をしていると。
わたしの足下に、ころころと消しゴムが転がってきた。
「ごめん、羽入さん……それ、俺の」
拾っている最中に声が聞こえて顔を上げると、周くんが申し訳なさそうに近付いて来ていた。
顔が赤い。緊張してるのかな。
まだ二年に上がったばっかりだし、去年は別のクラスだったからあんまり話したことないしね。
わたしは差し出された手に消しゴムを落としながら、緊張をほぐそうかと会話を持ちかけた。
「さっき、目合っちゃったね~」
「えっ……あ、そうだね……」
相手からの態度はまだまだぎこちない。
敵意がないことを示すために、柔らかい表情を崩さないようにする。
「周くんって、犬飼ってる?」
「へっ? な、なんで?」
「わたし犬好きだから、飼ってたら写真とかないかな~と思って」
そしてよかったら写真を送ってもらって、密かに溜めている犬の写真フォルダに格納するんだ~……!
すると周くんは雰囲気をふわっと明るくさせて、少し口角を上げた。
お、好感触? 嬉しくて、思わずわたしも顔が緩む。
「……犬、好きなんだ」
「うん!」
「っ、……あの、俺……飼って、ます」
なるほどね、周くんも犬が好きなんだ。共通の話題、見つかってよかった。
わたしと同じ気持ちなのか、周くんは顔を背けて嬉しそうな口元を隠した。
ふふ、ニヤけちゃってるなぁ~? わかるよその気持ち、同じ趣味の人を見つけたらテンション上がるよね。