真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 そうしてお弁当を食べ終わって、授業の準備をしていると。


 わたしの足下に、ころころと消しゴムが転がってきた。


「ごめん、羽入(はにゅう)さん……それ、俺の」


 拾っている最中に声が聞こえて顔を上げると、周くんが申し訳なさそうに近付いて来ていた。


 顔が赤い。緊張してるのかな。


 まだ二年に上がったばっかりだし、去年は別のクラスだったからあんまり話したことないしね。


 わたしは差し出された手に消しゴムを落としながら、緊張をほぐそうかと会話を持ちかけた。


「さっき、目合っちゃったね~」

「えっ……あ、そうだね……」


 相手からの態度はまだまだぎこちない。


 敵意がないことを示すために、柔らかい表情を崩さないようにする。


「周くんって、犬飼ってる?」

「へっ? な、なんで?」

「わたし犬好きだから、飼ってたら写真とかないかな~と思って」


 そしてよかったら写真を送ってもらって、密かに溜めている犬の写真フォルダに格納するんだ~……!


 すると周くんは雰囲気をふわっと明るくさせて、少し口角を上げた。


 お、好感触? 嬉しくて、思わずわたしも顔が緩む。


「……犬、好きなんだ」

「うん!」

「っ、……あの、俺……飼って、ます」


 なるほどね、周くんも犬が好きなんだ。共通の話題、見つかってよかった。


 わたしと同じ気持ちなのか、周くんは顔を背けて嬉しそうな口元を隠した。


 ふふ、ニヤけちゃってるなぁ~? わかるよその気持ち、同じ趣味の人を見つけたらテンション上がるよね。


< 4 / 167 >

この作品をシェア

pagetop