真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 下を向いているから、影に隠れて一悟くんの表情は読めない。


「……あなたがダメだった理由を教えてあげます」


 え? と名無しの男の子が一悟くんを目に留める。


 わたしも気になって、一悟くんの言葉を待った。


「……それは、」


 それは……?


 一悟くんが顔を上げる。



「――運が悪かったんです!」



 ななしくんがポカンと口を開けた。


 わたしは確かになぁと納得する。


 あのときは、多少気まぐれなところがあったかもしれない。本当になんとなくだったし。


 でも、わたしの第六感的な働きだったと思うんだよね~。


 だから、誰でもよかったわけじゃないはずなんだけど。


「う……運……? そんなので、僕は負けたっていうのか……!?」


 深刻そうな顔で、ななしくんがショックを受けている。


「『そんなの』ではありません。運で勝ち取った俺は、めちゃくちゃすごいんです」

「でもそうだよな、運以外で勝算なんていくらでもあるもんな……。運が悪かったから、か……」

「はい。あなたの運が悪くて、俺の運が良かった、それだけの話なんです」


 そんなに運って連呼しなくても……。一悟くんは運だけじゃないよ。


 一悟くんの魅力がたくさんあるの、わたし知ってるのに~……。


「でも……でも……!」


 ブンブンと首を横に振り、泣きそうな目でわたしの肩に圧をかけてくるななしくん。


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