真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
「める! やっと戻ってきた!」
教室に入れば、木葉ちゃんが駆け寄って抱きついてくる。
わ、どうしたんだろう。
木葉ちゃんがこんな風に甘えてくるなんて珍しい。
息を荒くして、木葉ちゃんはわたしにべったりとくっついて離れない。まるで何かに怯える子猫だ。
「木葉ちゃん?」
「あ、あ、あれ……!」
木葉ちゃんが指差す先には、有明くんがいた。
あ、わたしが一悟くんを独り占めしてたから、待たせちゃってたのかな。
と、一瞬思ったけど、どこかおかしい。
有明くんがいるのは……わたしの席だ。
「ああ、すまない羽入さん。少しの間席を借りていた」
わたし達が戻ったことに気付いて、有明くんもこっちに寄ってくる。
小さく「ひっ!」と木葉ちゃんが悲鳴をあげた。
「ううん~。それは大丈夫だけど……」
この木葉ちゃんの怯えっぷり、きっと有明くんが原因なんだ。
「キミ達二人がいないようだったから、彼女のことを誘ってみたんだが……なぜか嫌われてしまって」
「あ~、そうなんだねぇ」
有明くんと近くにいるの、本当にむりなんだねぇ……。
「あのね、有明くん。木葉ちゃんは有明くんのファンなだけだから気にすることないと思うよ~?」
「ファン?」
「うん、とっても気難しいファンなんだよ~」
「は、はぁ……」
ちらりと有明くんが木葉ちゃんのことを見るも、彼女はわたしの肩に顔を埋めて隠れてしまう。
「むり……むり……っ!」
何度も唱えて、ふるふると首を振ってくる。
わたしはふっと笑みを浮かべて、木葉ちゃんの肩を抱いた。
「木葉ちゃん、むりは、むりじゃないんだよ?」
「っ、は?」
木葉ちゃんは怪訝な顔で見上げてくる。