真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 一悟くんとの距離は目と鼻の先だ。


「っ!」


 そのことに動揺した一悟くんが顔を逸らす。


「え、えっと……みんないるから……」

「えっ? ……あ~」


 そういえば、ここ教室だった。


 一悟くんしか見えてなくて、すっかり忘れてたよ。


 少し残念だけど離れることにする。


 そのとき、一悟くんが腕で口周りを塞いだ。


「っくしゅん」

「わ、体冷えちゃってた!? は、早くジャージに着替えよう!?」

「うん……そうしようかな。タオルは洗って返すから……」

「そんなのいいよ、早く~っ」


 わたしが一悟くんに見とれて引き留めちゃったからだ。


 風邪ひかないといいんだけど……!


 一悟くんの背中を押して彼の席に移動する。


 わたしは、ジャージを準備する一悟くんを後ろから抱き締めた。


「はっ……!?」

「ちょっとでも暖めとこう? ボタン外していいかなぁ?」

「あ、ちょ、自分でできるから……っ!」


 抵抗してきた一悟くんに剥がされて、ぽつんと後ろに立つ。


 その間に素早く着替えた一悟くんは脱いだシャツを畳みながら、


「……俺の心臓が持たないよ」


 ちらりと後ろのわたしを窺ってくる。


 困ったような表情で、耳まで赤い。


 きゅ~ん……。


 可愛すぎて、ときめきが抑えられない。


 恋って、すごいんだねぇ……。


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