真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 ――――なんと、突進でもしてくるかの如く犬が高速でこちらへ駆けて来ていた。


 リードをなびかせているところから察するに、飼い主が手を離してしまったのだろう。


 このままじゃぶつかって怪我でもしてしまうかも。


「あ、有明くん、逃げる?」

「いや違う、羽入さん……その後ろ」

「後ろ?」


 犬の後ろ。というと、少し離れたところで立ちすくんでいる人がいた。


 あの人が飼い主かな。


 なぜか、全然動かないけど。


「あれ、一悟! 犬は俺が捕まえるから、羽入さんはあいつのところに行って!」

「あ、え、え~!?」


 わたし達の横を過ぎ去った犬を追いかける有明くん。


 いろんなことが一気に押し寄せすぎて、どれから処理したらいいかわからない。


 と、とりあえず、一悟くんのところに行こう!


「一悟くん~!」

「こっ、来ないで!」

「なんで~!?」


 わたしは駆け出そうとしていた体勢でピタリと止まる。


 そこからゆっくり足を動かそうとしてみたら、


「近づいちゃダメだってば!」


 と警告される。


 よ、余計にどうしたらいいのかわからなくなっちゃったよ……!?


「い、今、俺めっちゃ気の抜けた格好してるから!」

「えっ?」


 腕で顔を隠す一悟くん。


 そんなこと言われたら、余計に気になっちゃう。


 少し離れた一悟くんをよーく見てみる。


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