真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
ダボッとした無地のシャツにスウェットのズボン。
髪の毛は無造作なまま。
顔は腕で隠されてるからよく見えないけど、メガネをしているような……?
腹の底から沸き上がる、好奇心のようなものがわたしの心を揺さぶった。
もっとよく見せてほしいなぁ……。
一悟くんが前を見ていないことをいいことに、足音を立てないようにしてゆっくり近付く。
「一悟くんっ」
「へ……どわあぁっ! 来ないでって言ったのに!」
「ふふ、来ちゃった……♡」
「可愛く言ってもダメ!」
一悟くんは、くるっと方向転換してわたしに背中を向けた。
背中を見せるのは、隙を見せてることと同じなのに。
もっと距離を近付けて、腕を回す。
「あのね、今日ずっと、一悟くんに会いたかったんだぁ……」
「っ!?」
一悟くんがビクリと反応する。
一日にも満たない時間なのに、触れ合いたくて仕方なかった。
わたし、すっかり一悟くんがいないとダメみたい……。
「だからね、こっち向いて? 一悟くんの顔、いっぱい見たいなぁ~……?」
「……」
返事を待つ間、全身で一悟くんのことを堪能する。
しっかりした背中とか、安心するにおいとか。
一日分の癒しをちゃんと摂取しとかないとね。