真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 不安だけど、一悟くんがそんなに慌ててないから大丈夫なのかな。


 いや……一悟くんは格好を整えるのに必死で、そこまで気が回ってないだけかも。


 急にハラハラと焦燥感が巡ってきた。


 有明くんと連絡先を交換してなかったのが悔やまれる。


 だって、


「一悟くんと犬、両方同時にモフれると思ったのに~……!」

「そんなこと考えてたの?」

「ひゃっ」


 ドアの前で、着替え終わった一悟くんが困惑した様子で立っていた。


 あっ、無意識に欲望が口からぽろっと……!


 体弱らせてる人のところに行くのにそんなこと考えてるなんて失礼だから、言わないようにしてたのに!


「モカ……犬なら、正がちゃんと捕まえてくれてるよ。ついでに、そのまま散歩もしてくれるって」


 ラインが来た、と有明くんとのやり取りを見せてくれる。


「そ、そっか、よかったぁ。えっと、そういえば一悟くん、風邪はもう大丈夫なの?」

「うん。熱は午前中にはもう下がってたよ……で、そんなにモカのこと触りたかったの?」

「ん~と……」


 一悟くんは隣に座ってきて、じっとわたしを見つめる。


 どうしてか気まずい。


 なんとなく、責められてるように感じる。


 風邪で休んでる人の家まできて、遊びに来たみたいに言われたら、そりゃあ怒るよねぇ……。


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