真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛
む……もう、なに~?
いいところだったのに~。
二人だけの世界を邪魔されて、気分が盛り下がっていく。
このまま放っておきたいところだけど、そうもいかない。
「はぁ……ごめん、ちょっと出るね」
大きなため息を吐いて一悟くんが立ち上がる。
いかにも重い腰を上げたって様子だった。
インターホンの通話ボタンを押して、一悟くんは不機嫌そうに答える。
「……はい、なに?」
砕けた口調から察するに、相手が誰だかわかってるみたいだった。
もしかして、有明くんかな。
『え、いや、犬を……。捕まえて連れ帰って来たんだが』
「……ごめん。今行く」
『あー……こちらこそすまない』
一悟くんはリビングを出ようとする。
わたしも有明くんに任せっきりしちゃったから、一緒に行こう。
無言で一悟くんの後ろを付いていくと、一悟くんが振り向いて、
「……もういっかいだけ」
ちゅっ。
一瞬だけ触れると、何事もなかったかのように玄関に向かった。
もぉ~……。
わたしは熱を逃がそうと自分の頬に手を当てる。
我慢って難しいんだねぇ……。
本当は玄関先でドアを開ける一悟くんの背中に今すぐ抱き付いちゃいたい。
だけどそれは有明くんに見られちゃうから、我慢した方がいいんだよね。
「はぁ……」
一悟くんに聞こえないように、小さく息を吐く。
さっきの一瞬。
顔を離したときの顔が――今までにないくらいに甘い微笑みだった。
きっと、わたしにだけ見せてくれる表情。
わたしだけの。
……かっこよかったなぁ。