真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


腕の中でもぞもぞと動いて、羽入さんが俺を振り向く。


「どうするの?」

「へっ」

「好きすぎるから……どうするのかなぁ?」


 余裕たっぷりな笑みを向けられた。


 すっかり羽入さんの手のひらの上だ。


 もうこの上からは降りられないし、降りたくない。


 俺はそっと彼女の顎に手を添えて、顔を近付けた。


「ん……」


 冷静に考えて信じられない。


 俺が羽入さんとキスしてるなんて。


 雲の上の存在だったはずなのに、こんなに近くにいて触れるなんて。


 この先、それ以上を期待してもいいなんて。


 ああ、俺って幸せ者すぎる――。







「幸せすぎて、怖い…………」


 ため息と一緒に出た言葉に、机を挟んだ向かい側に座る正が苦笑を浮かべた。


「それはよかったな」

「え!? 俺、不安な気持ちを吐露しなかった!?」


 なんにもよくないんだけど!?


 愕然とする俺をスルーして、正はお弁当を食べ続ける。


 む、無視……!?


 普段絶対に目を見て話を聞いてくれる正にそんな態度を取られ、二度目の衝撃が俺を襲う。


 ショックで頭が真っ白になっていると、正は口を開いてくれた。


< 84 / 167 >

この作品をシェア

pagetop