真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 俺もつられてそっちを見た。


 すぐに羽入さんに釘付けになって、それ以外が霞んでいく。


 もう好きに代わる言葉が思い付かない。


「一悟は……できるなら、お昼も彼女と二人がいいよな」

「へっ?」


 正のポツリと呟いた言葉に意識を戻された。


「そ、そりゃあそうだったら嬉しいけど」


 さすがにちょっと気を遣いすぎな気がする。


 俺は好きで正と一緒いるわけだし、そこまでは望んでないっていうか。


 二人とは言わず、一緒にってことなら歓迎なんだけど。


「最近、少し考えていたことがあるんだ」


 そう言って、正は立ち上がった。


 スタスタと羽入さんに近付いていく。


 だけど、用があるのはもう一人の方だったみたいだ。


「えっと、木葉さん……だったか」

「ギャーッ!」


 バチーーン!!


 頬に真っ赤な紅葉を付けた正が戻ってきた。


「まだ駄目だったみたいだ」

「ご、ごめっ、ちがっ、急に名前呼びするから、び、びっくりしてっ……。ひぃっ、こっち見ないで……っ!」

「あー、それはすまない。ただ、フルネームを知らなくて……」

「…………い、和泉(いずみ)。和泉木葉」

「そうか、和泉さん。俺は有明正だ」

「……知ってる。……た、叩いて、ごめん」


 今にも泣き出しそうな表情の和泉さんと、彼女の顔を見ないように背中を向けて話す正。


 二人の様子を呆然と眺めていたら、いつの間にか羽入さんが俺の隣に立っていた。


 ニコニコと微笑んでいる。


「あの二人って、あんな感じだったっけ……?」


 指差しながら聞くと、羽入さんは笑顔のまま頷いた。


 
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