真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


 有明くんの機嫌が悪くなる気配がしたので、すかさずわたしから新しい風を入れる。


「あ、周くん! それで、どうかなぁ? 大丈夫?」


 ようやく我に返ったように、周くんはわたしを見てくれた。


「う、うん……。あの、ちょっとこっちに……来て、くれませんか?」


 周くんに手を引かれる。


 え、と声を出したときには、有明くんの姿が小さく見えるほどだった。


 曲がり角の直前、有明くんが呆れ返った様子で腕を組むのが見える。


 この後、二人の友情にヒビが入らないことを祈ろう……。


 移動の最中に周くんを見上げてみるけど、彼は前を向いて必死そうに歩くだけで何も言わなかった。


 人気のない廊下に着いて、その上まだ誰か来ないかキョロキョロと確認する周くん。


 まぁ、校内でやりとりするんだったら先生に見つかるわけにはいかないもんね。


「あ、ごめん羽入さん……夢中で連れてきちゃって」

「ううん。それより、くれるってことでいいんだよね?」


 わたしの切り替えも早い。すぐさまスマホを取り出して、周くんに詰め寄った。


 周くんは戸惑ったように頬を赤らめる。


「……っ、う、うん……」

「ラインでいい? 今QR出すね~」

「喜んで……っ!」

「ふふ、こちらこそ~」


 読み取ってもらって、ラインの交換を完了させる。


 そのときに見た周くんのプロフィールアイコンがこれまた可憐な犬の画像で、一緒に周くんも映っていて素敵だった。


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