真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛



 だから、知識だけは頭に入ってて。


 後は……実践ってところ?


『はい? え? 準備って、心の準備とかじゃ、なくて?』

「心の準備? 今更必要かなぁ?」


 だって、何度も覚悟してねって言われて実際してるし。


 たぶん、それはずっとずっと最初からあると思うんだけど……。


『…………』

「一悟くん?」


 また静かになっちゃった。


 だけど今度は、微かに深呼吸のような息遣いが伝わってくる。


『っ、…………こわ』

「ん~?」


 よく聞き取れなかった。


 なんだろう。スマホを頬とぶつかるほど近付けてみる、と、



『――俺! テスト勉強しないとっ!!』



 そんな一悟くんの大声に、耳がビリビリして体も動かなくなる。


 しばらく固まった後に画面を見るといつの間にか通話は終わっていた。


 終了時間だけが映し出された無機質な画面と見つめ合って、数分。


 えっと……? 拒否されたってことで……いいのかなぁ?


「……ふぅ~ん?」


 そう解釈してしまえば、メラメラと気持ちが燃え上がってきた。


 一悟くんがその気なら、わたしだって勉強頑張っちゃう。


 それで心置きなく夏休みを楽しめるようになったら、いろんなところに連れ出しちゃうから。


 絶対、逃がさないよ~……?


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