真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


「お、おじゃましみゃ、しまう、す」

「うん、どうぞ入って~」


 一悟くんが右の両手足を同時に玄関へ入れた。


 ドアが閉まり、オートロックが施錠音を鳴らす。


「わぁ!?」

「ん?」

「な、なんでも、ないです。オートロックって、こっちからは普通に開けられるんだよね?」

「うん。閉めようか? はい」


 内側からも鍵をかける。


「ほ、ほぁ……」


 一悟くんはカチコチに緊張している。顔は真っ赤で、汗が出てて、まばたきが多い。


 意識してもらえてるってことなのかな。


「密室だね?」

「べ、勉強、しよう。俺は勉強しか、しに来てません」


 あれ、スルーされちゃった。


 家に着いてから、全然こっちを見てくれないし。


 なんだかちょっと、面白くない。


 制服の袖を軽く引いてみる。


「……ほんとに勉強だけ?」

「へ」

「ほんとのほんとに?」


 じ~っと見上げていたら、一悟くんの額がさらにじんわりと汗ばんできた。


「汗かいてるみたいだし、シャワー貸そっか?」

「~~っ! 羽入さん、ち、ちょっと煽りすぎ」


 肩を押されて距離ができる。


 う~ん。その解釈で合ってるんだけどなぁ。


 もうちょっと緊張をほぐしてからの方がいいのかな。


 二人きりなのに、ここまで抵抗されると思ってなかったから悲しくなってくる。


 わたし、下手なのかも……。


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