真っ赤ないちごくんの可愛い溺愛


「じゅ、準備……」


 吐息混じりに、一悟くんが口を開く。


「準備、羽入さんだけにさせるのは嫌だったから、俺もしてみたんだけど……」


 スッと手を差し出された。


「何したか、わかる……?」


 これは――試されている。


 わたしと一悟くんの『準備』に、ズレがないか確認されている気がした。


 この手を見たら、わかるのかな。


 自分の手を重ねる。こうして見比べると、本当にわたしとは全然違う。


 手の甲のゴツゴツとした凹凸に指を滑らせる。


 指の間を通って、手のひらへ。


 どこを触っても熱い。


 最後に、指の形を一本一本確かめていく。


「……っ、」


 ピクリと一悟くんが反応した。


 それを合図にして、わたしはギュッと一悟くんの手を握った。


 一悟くんが準備してくれたのは、手でも、指でも、なくて。



「――爪、短くて角がないね?」



 ゆっくりと顔を上げると同時に、一悟くんが小さく唾を飲み込んだのがわかった。


 瞳が期待に満ちている。


 この反応は、正解だったみたい。


 これくらいなら、わたしも知識に入れてたよ。細かいことだけど、大事な配慮だよね。


 それを選んでくれたなんて、一悟くんらしいなぁ。


「……一悟くん、しよっか?」

「き、キスだけ。それだけね。今日は勉強会だから」

「え~、まだ言ってる」

「勉・強・会だからっ!」


 一悟くんがそれでいいなら、わたしもいいけど。


 その代わり、ちゃんと足りてないところを埋めてくれるんだよね?


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