恋の始まりはいつだって唐突に


困った。折れそうにない掛井さんにどう納得してもらえばいいのか。

なかば私も意地になってしまい、話は平行線だ。



ここで、掛井さんが最後の爆弾を落とした。




「別に上司だからじゃない」

「……え?」

「あんな危なっかしい所に、好きな女を置いて平気で帰る男はいない」




当たり前だろ、とでも言いたげな掛井さんを見上げる。




好きな女。

掛井さんが? 私を?



確認しなくてもわかる、今の私はものすごく間抜けな顔をしているだろう。




「か、掛井さん、」

「そういう事だから」



どういうこと!?



じゃあまた月曜日な、と何事も無かったように帰ろうとする掛井さんを見て我に返る。


こんな発言をしておいて、どうして何事も無かったように出来るの!



「ちょっと待ってください……!」


足を止めた掛井さんがこちらを振り返る。




「とりあえず落ち着いてさ、」



一晩俺の事だけ考えてろよ。





何事も無かったかのようにこの場を後にする掛井さんの後ろ姿を見ながら、呆然とする。





宣戦布告なようなそれを、私はまだ素直に飲み込めない。



さて、これからどうなる?











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